園便り
今月の園便り 2023年2月
見失った羊を見つけたので、一緒に喜んでください!
(ルカ15章6節)
12月末に左足を怪我してしまい、皆様にご心配をおかけしました。ひと月以上経ち、順調に回復しています。まもなく「杖」ともお別れできそうです。足が不自由になり、子どもたちの優しさ(共感力)を感じています。廊下で出会うと一緒にゆっくり歩いてくれる子、「シスターが一人でお部屋にいて、寂しそうだから行ってあげる。」と園長室にお話しをしに来てくれる子、心配そうに足をじっと見つめる子、登降園時に毎日「お大事に!」と声掛けしてくれる子など、思いやりの心をおすそ分けしていただいています。
先日、神奈川県幼稚園連合会主催の研修会に参加しました。慶應義塾大学の中室牧子教授「教育に科学的根拠を」というテーマで、近年教育分野で言われている「非認知能力」について世界と日本の研究、実際に行われている調査の動きなどが語られ、大変興味深いものでした。聴きながらカリタス幼稚園の子どもたちの育ちについて納得できたことが多々ありました。IQや学力といったテストなどで評価している能力を「認知能力」と言い、自己肯定感、意欲、忍耐強さや粘り強さ、自制力、コミュニケーション力などの能力を「非認知能力」と言います。中室先生は、アメリカのシカゴ大学の経済学者でもあり、2000年にノーベル経済学賞を受賞された「幼児教育の経済学」の著者でもあるジェームズ・ヘックマン氏の研究内容を紹介し、より良い人格形成のために、就学前の乳幼児期における教育が幼・小・中・高・大学の中で最も効果的であること、とりわけ非認知能力を高めることが重要であるとデータをもとにおっしゃっていました。
様々な運動機能を使う環境、言語、数について興味を広げられる環境、図書が充実した環境などが教育環境のポイントとして挙げられていましたが、それらはカリタス幼稚園の生活環境に整えられているものと言えます。繰り返し納得がいくまで活動できる環境によって諦めない心や忍耐力が自然に身につくことは、卒園した子どもたちの特徴として挙げられています。もちろん、保育にあたる教員の専門性と誠実さという人的環境は最も大切です。
「充実した教育環境の中で育つ子どもたちは、自分はできると信じ、諦めない心が育ち、自制心を持って他の人たちと協調しチームとして仕事ができる人、目標を達成することができる社会人に成長していく」と中室先生は語ります。
非認知能力の育ちは長年にわたってその人に影響を与え、学力、人間関係、安定した生活につながるのだそうです。私たち大人は、「認知能力」の視点だけで子どもを見ていないか、今一度振り返る必要があるかもしれません。子どもたちの自制心(自分の感情をコントロールする能力)、忍耐力の育ちがその人のその後を支える大切な力であることを再確認した時間でした。
今回、足の怪我で思うように動けないという弱さを実感し、子どもたちの共感力の大きさを改めて感じています。巻頭に挙げた「見失った一匹の羊」の聖書の箇所は、見失った一匹を見つけた羊飼いの言葉です。「一緒に悲しむ」「一緒に喜ぶ」ことができたらどんなに人に希望を与えられる豊かな人生になることでしょう。カリタス幼稚園で大切にしている「祈り~信頼」はまさにイエス様の「非認知能力」を知ることにつながるのかもしれません。
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