園便り 2022年3月

園便り

今月の園便り 2022年3月

        漕ぎ出せ、漕ぎ出せ、世の海原へ 先立つ主イエスに身を委ねて

                                聖歌「大波のように」 

 今年度の締め括りの月となりました。先月、各学年のクラス編成に替えてから数日間、子どもたちが「臨時クラス」でどのように過ごしているのかクラスを巡りました。印象的だったのは、登園してくる子どもたちが、自分がどこのクラスに行くかわかっているということでした。「大丈夫。言わなくてもわかっている!」と自信を持って玄関で答える姿に、変化があっても適応できる子どもたちの育ちを改めて感じました。わかるよう説明している教員の導入と、保護者の方が、子どもたちが戸惑わないように伝える親子間の丁寧なコミュニケーションの様子に感心しました。

 

 年長さんのクラスは、今しかできないお仕事への集中が強く見られました。日頃、年少さんたちの見守りやお世話などの奉仕をしてくれている彼らが、黙々とお仕事に向かっている様子に、小学校に行く準備ができていると感じます。年中さんは、体操など横割り時間は、他クラスの子どもたちと関わってはいますが、長時間の交流は、新鮮で「やってみたい、やってみよう。」という気持ちが触発されていることが伺えます。年少さんは、「自立した姿」を見せてくれています。誰にも頼らず、自分の力で最後まで落ち着いてお仕事をする姿に成長を感じられると同時に、3歳児にとって秩序感がどれほど大切かも教えられます。クラスや担任の先生が変わること、それまでの秩序が変化することに敏感になるのが、年少さんです。

 

 生まれつきの能力や素質を表すタレントという言葉の語源は、古代ギリシアの通貨タラントンからきています。1タラントンは、当時の価値で20年分の生活費にあたる莫大な金額です。新約聖書マタイの福音書にあるイエスの語られたたとえ話に、ある主人がしもべたちに、この莫大なタラントンを託して旅に出る物語があります。主人は、神さまを指しているのですが、託されたタラントンを、喜んで預かり、増やそうとするしもべ、預かったタラントンを失うことを怖がり、土の中に埋めてしまうしもべが登場します。

『~しばしば人と比較して自分の容姿や才能、あるいは運のなさに不満を持ったりします。生きていく上で、しばしば最も重荷になるのは自分自身です。自分の曲がった性格や頑固さにうんざりすることもあるでしょう、しかし、それ以前に自分が今、ここに生きている、命の賜物をいただいていると言うこと自体、それらとは比較にならない大きなプラスなのです。私たちは自分がこの世に生を受けてきたことの恵みの大きさを忘れがちです。自分の存在そのものが恵みであり、与えられたタレントなのです。それならそれを燃え尽きるまで、精一杯生き切りましょう。~弱さ欠点もひねくれた性格も“タレント”の一つになります。神さまはわたしのすべてを道具として使ってくださるでしょう。預かったタラントンは、この地上に生を受けた私自身です。』(岩島忠彦著『福音の記憶』より)

 成長し続ける子どもたちは、人と比較して、自分のタレントの乏しさに悩んだりする時期もあるでしょう。その時「あなたの存在そのものが、すばらしい宝(タラントン)なのだよ」と心から信じている人がいたらどんなに力づけられることでしょう。ご家庭、幼稚園がその子の内なるタラントンを信じ続けることが大切です。

 在園児と卒園児、また卒園児同士が共に過ごす時間もあとわずかな3月です。新型コロナ感染に注意を払いながら、それぞれの大切なタラントンを大切にし、刺激し合える関わりを作れるよう祈り、援助してまいります。年長児保護者の皆様、小学校へ行かれても、子どもたちと幼稚園に足を運んでくださいね。