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園便り
今月の園便り 9月
<子どもが答えを持っている>
モンテッソーリ教育の大きな特徴の1つに「自己選択」があります。それは、「自分でやりたいお仕事を選ぶ」ことです。子どもは「自分が今、どの機能を伸ばしたいのかを知っている」ということがモンテッソーリ女史の発見です。マリア・モンテッソーリは、ローマ大学医学部に進学します。しかし、当時、女性が医学を学ぶということはありえませんでした。彼女の医学生としての大学での扱いはとても過酷なもので、男性と一緒に解剖をすることは許されず、男子学生が解剖を終えた後、たった一人で解剖を学ぶほどの扱いだったのです。そのため、医師としての資格を取ったものの、内科や外科などの医師になることはできず、唯一受け入れてくれたのは「精神科」でした。この精神科で小児精神科を立ち上げることになります。そして、この時、精神的発達の遅れがある子の世話をすることになります。この子たちは、不衛生な部屋で食事を摂らされ、「食事が終わると床を這いつくばっている汚い子」と周りの大人から捉えられていました。しかし、モンテッソーリは「この子たちは何をしているのだろう」「どこを伸ばしたいのだろう」という視点で観察をしました。すると、子どもたちが這いつくばって、床に落ちたパン屑を指で一生懸命拾い上げようとしていることに気づきました。この様子から、子どもたちは指・手を使いたがっていることを発見し、指・手をたくさん使う教材を準備し、子どもたちに与えてみると驚くほどの発達を遂げることになるのです。
子どもの様子を見る時、大人の希望や価値観が反映され、子ども自身の成長よりも、「○○して欲しい」「○○することができない」と思いがちですが、モンテッソーリは「何をしているのだろう」「何がしたいのだろう」という視点で観察することを忘れませんでした。常に、科学的な観察をしながら、子どもの発達を援助できる環境を準備したのです。私たち大人も、モンテッソーリのような視点を持って子どもを観察し、接していくことが大切です。その方法としては、例えば、日常生活の練習にシール貼りというお仕事があります。シールと同じ大きさの○が紙に書かれていて、そこに貼るものです。これは、子どもが自分の指先を器用に使ってシールを剥がし、目標物に大きさを合わせること(目と手の協応)が目的になっています。このお仕事を繰り返し行う子どもと、1回やってすぐに戻してしまう子どもに分かれます。繰り返し行う子どもたちと1回で終わる子どもたちには、それぞれ共通することがあります。それは、繰り返す子どもたちは、シールを目標物にピッタリ貼ることができること、1回で終わる子どもたちは、シールを目標物にピッタリ貼ることができず、ずれてしまうことです。繰り返す子どもには、シールを貼る土台の絵柄を替えることで興味がさらに増して繰り返します。1回で終わる子どもには、指先をまだ器用に動かすことができないので、○の大きさを扱いやすいサイズにして、目標物にピッタリ貼ることができる教材を準備します。子どもが示している姿をとおして、大人が気づき、その子にあった教材や関わり方を準備することが、モンテッソーリが子どもたちにしたことです。子どものできる・できないを見ることではないのです。子どもたちの取り組みについて、先日、教員と話をしている時に「子どもを見ていると子どもが答えを示している」という発言を聞くことができて、とても嬉しくなりました。これこそが、私たちモンテッソーリアンの務めだからです。子どもを科学的に観察し、子どもの行動を見ていくと、この子が何をやりたがっているのかがわかります。子どもを大人の意思で強制的に変えるのではなく、私たち大人が、子どもが身体の中から求めているものに合わせて教材・環境を準備することや子ども自身が理解することができる方法で伝えていくことを大切にしていきたいと思います。
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